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村上 密 Blog

脳・異常体験・カルト

 Aさんの娘さんがカルトに入信し、家出をしました。ある日、息子さんと仕事に出かけました。Aさんは仕事場で娘さんを見かけました。そして走り去る娘さんの名前を叫びながら走り出しました。息子さんはAさんの突然の行動に驚き、お父さんを追いかけました。

 走っている人は何人でしょうか。ある人は三人と答えました。ある人は二人と答えました。正解は二人です。Aさんの目に映っている娘さんはAさんの前を走っていません。しかし、Aさんには見えます。そして、息子さんには見えません。人間の脳は網膜に映っていなにのに見えているように像を作り出します。夢もそうです。

 Bさんは高齢で、心の病いにかかっています。かつて民間信仰を熱心にしていました。Bさんは自分の家には変な動物がいて、タンスの中から飛び出したり壁をはい上がったり、納戸から飛び出したりすると聞かせてくれました。実際は何も住んでいません。しかし、Bさんには見えます。私には見えない動物を見ています。それも、実在しない架空の動物です。この動物はBさんの脳が作り出した像です。

 カルトの中では異常体験がしばしばあります。それは睡眠不足や不規則な生活、極度の疲労等によって異常脳波が生じるからです。そこで、光、浮遊感、幻覚等を宗教的にのみ解釈するのは危険です。オウム真理教は、薬物によって幻覚を生じさせ、入信に誘い込みました。異常体験がよく語られる集団では、その語られる異常体験がしばしば起きます。これは集団心理現象です。周囲で語られる情報が均一であるため、聞く人の中にイメージ化が進みます。UFO愛好家たちによく見られる現象です。

 異常体験が身体的、心理的、宗教的、薬物等によるものか見分けなければなりません。人は自分が体験したものを絶対化する傾向にあります。「だって私は見たんです、聞いたんです。」カルトに入信した人は主観主義によく陥っています。私がカウンセリングする時は別の宗教集団で起きている事例を話して客観的な見方を育むようにします。感情を害しない程度に語りかけます。
by maranatha | 2008-06-06 11:19
宗教問題

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