昨日、「にせ預言者に気をつけろ」というタイトルで、繁栄の神学の元凶である「ワード・オブ・フェイス」の危険性を警鐘する記事を掲載した。この危険な異端的ムーブメントの悪影響が及んでいるのは、アメリカの単立カリスマ系だけではない。昨日の記事でも指摘したように、問題は単立カリスマ系だけに留まらず、第三の波や超教派の聖会や彼らのTV番組等のメディアを通じた巧妙な宣伝により、教団・教派の垣根を越えて福音派にも悪影響が及んでいる。
「ワード・オブ・フェイス」の教えの中核は、「可能思考」「積極的告白」「ビジュアライゼーション」である。つまり、自分の夢や願望をありありと心に描き、積極的に信じて口で告白すれば、願いは叶えられ、病は癒され、「経済的繁栄」が得られるといった教えである。一昔前に日本でも流行したニューエイジ系の「自己啓発セミナー」の教えに酷似している。問題は対岸の火事どころか、ここ20年の間、日本の教団教派にも及んできている。事実、昨日の記事の写真に顔が載っているにせ預言者達27名の内には、これまで聖会の主講師として日本に来日した者達がいる。代表的な例は、ベニー・ヒンとロドニー・ハワード・ブラウン、そしてモーリス・セルロ(http://www.faithmedia.jp/catalog/Revival20.pdf)である。
まだ来日はしていないが、書籍が随分売れ、日本にも影響を与えてきた人物はリック・ウォレンとジョエル・オースティンである。リック・ウォレンの場合、パーパス・ドリブン・ジャパンなる団体も存在する程である(http://www.logos-pb.com/)。また、写真には掲載されていないが、これまで幾度も日本に来日し聖会で、「可能思考」と「積極的告白」及び「夢と幻を描く」等の教えを語ってきたのは、チョー・ヨンギであり、代表的な著作は「第四次元」である(https://www.amazon.co.jp/%E7%AC%AC%E5%9B%9B%E6%AC%A1%E5%85%83-%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A8%E3%83%B3%E3%82%AE%E7%89%A7%E5%B8%AB/dp/492115600X)。
検索していると興味深い記事を発見した(http://www.christiantoday.co.jp/articles/1642/20071119/news.htm)。記事のタイトルは「4次元の人になるためのセミナー開催 沖縄」である。これは日本に「ワード・オブ・フェイス」の悪影響が浸透してきている事実を示す典型的な実例である。この記事によれば、2007年11月13~15日、沖縄でトランスフォーメーション・グロースなる団体が主催する「4次元の人になるためのセミナー」が開催され、延べ130人が参加したという。以下は記事の抜粋である(下線部は筆者):
「セミナーは、信徒数70万人以上と世界最大の教会である韓国のヨイド純福音教会が持つ牧会哲学の中心におかれるもので、目に見えない世界である「霊的次元」について学び、夢を実現化する積極的な姿勢を継続して持つことの大切さが伝えられた。セミナーでは、ヨイド純福音教会で牧師を務め、教会成長研究所所長である洪霊気(ホン・ヨンギ)氏と、小牧者訓練会代表で国際福音キリスト教会主任牧師の卞在昌(ビュン・ジェーチャン)氏が講師を務めた。」
「ビュン氏は講演で、尊敬するチョー牧師のメッセージを研究、内容を日本に合わせ、約100余りの説教を伝えていく過程で、それぞれの説教を心に取り込み、コピーすることの大切さがわかったと証し、スタッフの一人であるルア伝道所牧師の伊礼徹氏は、最も印象深かったと語った。」
上記の記事によれば、、チョー・ヨンギのヨイド純福音教会の牧会哲学の中心は、「『霊的次元』について学び、夢を実現化する積極的な姿勢を継続的に持つ」事だという。この教えは正に、「ワード・オブ・フェイス」の教えそのものである。更に驚かされたのは、このセミナーの講師が、ヨイド純福音教会のCGI(国際教会成長研究所)の所長ホン・ヨンギだけでなく、なんと、「幸いな人」のビュン・ジェーチャンだった事である。ビュン・ジェーチャンと言えば、パワハラ、セクハラの不祥事で、被害者から訴訟を提起され、今年6月に不法行為等の判定が確定している。有罪が確定した人物であることは周知の事実である(被害者団体のURL:http://www.mordecai.jp/)。ビュン・ジェーチャンの不祥事が発覚する前は、ディボーション誌「幸いな人」は、福音派のみならず、ペンテコステ・カリスマ派の諸教会にまで購読され広範な影響を及ぼしていた。事件発覚後これまで、ビュン・ジェーチャンのセクハラ・パワハラ問題は報道されてきたが、教理面の問題はあまり指摘されてこなかった。上記の記事によれば、ワード・オブ・フェイスの中心的教えである「繁栄の神学」「可能思考」「積極的告白」の代表的提唱者であるチョー・ヨンギを、ビュン・ジェーチャンは尊敬しており、チョー・ヨンギの100余りの説教を「研究し、心に取り込み、コピーする事の大切さが分かった」と証したという。この2007年11月のセミナーの後、2008年5月、その説教をコピーする程までにチョー・ヨンギの教えに心酔していたビュン・ジェーチャンのセクハラ不法行為が発覚し、2009年7月、被害者女性らに訴えられている(http://www.mordecai.jp/doc/chronolory_2008-2016.pdf)。
これは果たして偶然だろうか?教理面で堕落すると、その結果として、必然的に倫理的にも堕落するという事実を証明してはいないだろうか?上記の記事「4次元の人になるためのセミナー開催 沖縄」を読んだ後、2テモテ4:3-4の「空想話」を想い出した。以下の聖句は「ワード・オブ・フェイス」のにせ預言者達に食い物にされ、毒麦が蒔かれ放題に蒔かれている今のアメリカと日本のキリスト教界を的確に言い当てている。
「人々が健全な教えに耳を貸そうとせず、自分に都合の良いことを言ってもらうために、気ままな願いをもって、次々に教師たちを自分たちのために寄せ集め、真理から耳をそむけ、空想話にそれて行くような時代になるからです。」(2テモテ4:3~4)