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村上 密 Blog

カエサルに上訴

パウロは、なぜ、カエサルに上訴したのか。簡単に使徒の働きを振り返ってみると、パウロはアナニヤから自分がイエスの名を「異邦人、王たち、イスラエルの子孫の前に運ぶ器です。」(9:15)と聞かされていた。そのため、彼は異邦人に福音を伝える働きを忠実に果たしてきた。彼は三次の伝道旅行をした。その過程で、「私は、心を縛られて、エルサレムに上る途上です。そこで私にどんなことが起こるかわかりません。ただわかっているのは、聖霊がどの町でもは私にはっきりとあかしされて、なわめと苦しみが私を待っているといわれることです。」(20:22,23)と示されていた。それゆえ捕縛の覚悟はできていた。ユダヤの最高議会であかしをした。(22、23章)その過程で、パウロは夜、「主がパウロのそばに立って、『勇気を出しなさい。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかししなければならない』と言われた。」(23:11)これが上訴した理由の一つである。もう一つは、パウロの姉妹の息子がユダヤ人たちのパウロを殺す陰謀を耳にしてパウロに告げた。パウロはそれを千人隊長に伝わるようにした。それで、裁判がエルサレムからカイサリヤに移った。裁判を担当したフェリクスは、ユダヤ人の歓心を買おうとして、裁判をエルサレムでするかと問われた時、パウロは「カエサルに上訴します。」(25:11)と言ったわけである。こうしてパウロは、アナ二ヤから聞いた「イエスの名を・・・王たち・・に運ぶ器」(9:15)となった。

使徒の働きには「裁判」10回、訴えるが6回、出廷が2回出て来る。それは使徒の働きの終わりに集中している。ルカは福音書において、イエスが十字架にかけられて息を引き取られた時、百人隊長が「この人は正しい方であった」(23:47)との証言を記録している。使徒の働きにおいては、千人隊長から総督ペリクスへの文書に「死刑や投獄に当たる罪はないことがわかりました」(23:29)と書いてあることを記録している。考えられることは、ルカがパウロのローマでの裁判に必要な「準備書面」を用意したのではないかと言うことである。パウロはどのような方を信じたのか。それをルカの福音書で書いた。その中に、イエスが罪がないことを書いた。そして、使徒の働きで、教会がどのように異邦人に伝わったか。その担い手であるパウロがどのようにしてイエスをキリストと信じるに至ったか。福音のゆえに囚われに身になったパウロが罪がないと千人隊長の証言を引き合いに出して、ローマで起きている裁判を勝訴に持って行こうとしているように思えるのである。裁判でパウロの弁護をしていると思われるテオピロに詳しい経過を2巻の文書にして送ったのではないか。

by maranatha | 2019-07-23 23:43 | 聖書と法
宗教問題