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村上 密 Blog

赦しの強制

 宗教トラブル相談センターには様々な悩みが寄せられる。よくあるのが、赦しの強制である。加害者を仲々赦すことができない被害者に対して、他人が赦しを強制している。「赦しなさい。聖書にそう教えているでしょう。」「なぜ、赦さないの。イエスさまがあなたの罪を赦してくださったように赦しなさい。」「赦しなさい」の連呼が被害者を実は苦しめている。「赦さない私が悪いのでしょうか」との質問に対して、私はよくピレモンへの手紙を引用する。被害者はピレモン、加害者はオネシモである。仲介者はパウロである。第三者であるパウロはいったいどのように語っているか。「もし彼(オネシモ)があなた(ピレモン)に対して損害をかけたか、負債を負っているのでしたら、その請求は私にしてください。」(18節)パウロはピレモンに赦しを強制しないで、パウロ自身がオネシモにかわって弁償を申し出ている。代理弁済である。仲介をする人は慎むべきだ。口を出すなら犠牲を払う覚悟が必要だ。

 
 太郎が花子の愛犬を誤って死なせてしまった。次郎が「花子さん、太郎さんを赦してあげて。」これは赦しの強制である。三郎が「花子さん、太郎さんがあんなに謝っているから赦しなさい。」これは謝罪だけで済ませる語りかけである。四郎が「花子さん、太郎さんを赦して。太郎さんが償いのために10万円持ってきて、お詫びをしたいと言てるよ。コロ(愛犬の名前)は生き返らないけど、赦してあげて。」ここには謝罪と償いがある。仲介者は加害者から謝罪と償いを取り付けて被害者に関わるべきだ。被害者の痛みを深く理解してこそ、加害者に謝罪の大切さと償いの必要をしっかり伝えることができる。「赦しなさい」の強制は、加害者側の立場で、何の犠牲も払わない対処である。

 残念なことだが、加害者は罪の意識が薄く、被害者は自責の念が深い。相談者で、加害者の相談は少ない。被害者の相談がほとんどだ。時間をかけ、被害者の状況を理解し、あるいは弁護士に相談し、法的、聖書的に問題を解決するため、宗教トラブル相談センターは取り組んでいる。
by maranatha | 2013-04-13 18:49 | 赦し
宗教問題

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