2008年 05月 15日
サタンよ出て行け Part2
「サタンよ出て行け」だけで人間の異常行動が治るわけではない。人間の異状行動は、宗教モデル、生理モデル、社会モデル、心理モデルに分類され、治療が試みられてきた。
宗教モデルは、人間の異常行動を悪魔の仕業とみなし、宗教家による悪魔祓いによって癒そうとする方法である。12世紀頃からヨーロッパに広がった魔女狩りは、精神病者を魔女とみなし多くの人々に対して悲惨な扱いを行った。
生理モデルは、ヒポクラテス(B.C460-B.C377?)が人間の異常行動は脳の異常であるとし、安静と節制による自然療法をすすめた。19世紀半ば、ドイツで精神病や異常行動を身体因による病気とみなす医師が登場した。
社会モデルは、18世紀にフランスで非人間的待遇を受けていた精神異常者に対して、人道的立場から彼らを収容施設から解放し、静養できる施設の建設が始まる。
心理モデルは、人間の異常行動は心的機能不全とする心因論に精神分析学、心理学とが結びつき治療しようとする心理療法の立場である。
なぜこのようなことを取り上げるかと言うと、カルト化した教会ではしばしば宗教モデルのみが取り組まれ、被害者へのダメージが深刻になっているからだ。人間の異常行動だけでなく、病気も不幸も全て悪魔のせいにして「サタンよ出て行け」を何日も何ヶ月も何年も繰り返している教会が存在する。この異常とも思える取り組みによって、正常な人々までもが異常心理状態に陥り、日常生活に異変が起きているのが現状だ。私は悪魔の存在を信じている。しかし、宗教モデルに固執しない。どのモデルも必要だと思う。
以前遠方から悪霊を追い出していただきたいと依頼を受けたことがある。娘さんの異常行動は悪霊につかれていると思っておられた。状態は悪霊につかれているように見えるが何度かカウンセリングを通して、統合失調症ではないかと思い、精神科医の診断を勧めた。結果は統合失調症であった。私は勧められる薬を飲めば症状はおさまると伝えたところ、ほどなくみちがえるような回復をみせた。又、悪霊つきと言われて10年近く悪霊追い出しの対象となっている女性をカウンセリングしたことがある。統合失調症だとわかったので、「あなたに悪霊はついていない。精神科に行って診断してもらい、薬を飲みなさい。症状がよくなるから」と勧めた。彼女は来たときと出て行くときとでは顔が違って見えるほど笑顔で退出した。
カルト化した教会では、日常が神と悪魔の戦いで、精神的緊張が強いられている。精神的な病を持っている人や情緒不安定な人は症状が悪化するだけだ。何度も「サタンよ出て行け」「悪霊よ出て行け」という対応だけを繰り返されたら、それはもう信仰による虐待だ。
読者に勧めたい。「サタンよ出て行け」と度々牧師や信徒が何人もの人に命じて追い出しているようなら、その教会から出て行くほうがよい。サタンは一人であって偏在ではない。何人もの人に何人ものサタンがついているような神学をもっている教会はその対応において間違っている。又、「悪霊よ出て行け」と毎週礼拝や集会で悪霊追い出しをしている教会なら、注意が必要だ。ノンクリスチャンに対してするよりもクリスチャンに対して悪霊追い出しを日常的にするのはおかしい。パウロは「あなたがたは神の宮であって、神の御霊が自分のうちに宿っていることをしらないのか」(Ⅰコリント3:16)と言っているではないか、なのに悪霊追い出しばかりして、いつクリスチャンが悪霊の宮になったのか。あなたの教会は悪霊の住処ですかと言いたい。
全ての不都合なことを宗教モデルで解決しようとする運動に私は荷担しない。私はペンテコステ派の牧師であるが見分けることを重視し、それにふさわしい対応を心掛けている。もし、ペンテコステ派の牧師がみんな悪魔祓いや悪霊祓いを日常的に実践していると思っていたら、それは偏見である。最後に私自身も悪霊を追い出したことがある。だから、悪霊追い出しを全面的に否定しているわけではない。悪魔祓いや悪霊追い出しによって何でも解決しようとする傾向に注意するためにこの記事を書いている。サタンは偏在ではない。しかし、悪霊は多数存在する。この件では又筆を取ろう。
注:4つのモデルは『講座 臨床心理学-1臨床心理学とは何か』(下山晴彦、丹野義彦 編:東京大学出版会)を参考にした。
宗教モデルは、人間の異常行動を悪魔の仕業とみなし、宗教家による悪魔祓いによって癒そうとする方法である。12世紀頃からヨーロッパに広がった魔女狩りは、精神病者を魔女とみなし多くの人々に対して悲惨な扱いを行った。
生理モデルは、ヒポクラテス(B.C460-B.C377?)が人間の異常行動は脳の異常であるとし、安静と節制による自然療法をすすめた。19世紀半ば、ドイツで精神病や異常行動を身体因による病気とみなす医師が登場した。
社会モデルは、18世紀にフランスで非人間的待遇を受けていた精神異常者に対して、人道的立場から彼らを収容施設から解放し、静養できる施設の建設が始まる。
心理モデルは、人間の異常行動は心的機能不全とする心因論に精神分析学、心理学とが結びつき治療しようとする心理療法の立場である。
なぜこのようなことを取り上げるかと言うと、カルト化した教会ではしばしば宗教モデルのみが取り組まれ、被害者へのダメージが深刻になっているからだ。人間の異常行動だけでなく、病気も不幸も全て悪魔のせいにして「サタンよ出て行け」を何日も何ヶ月も何年も繰り返している教会が存在する。この異常とも思える取り組みによって、正常な人々までもが異常心理状態に陥り、日常生活に異変が起きているのが現状だ。私は悪魔の存在を信じている。しかし、宗教モデルに固執しない。どのモデルも必要だと思う。
以前遠方から悪霊を追い出していただきたいと依頼を受けたことがある。娘さんの異常行動は悪霊につかれていると思っておられた。状態は悪霊につかれているように見えるが何度かカウンセリングを通して、統合失調症ではないかと思い、精神科医の診断を勧めた。結果は統合失調症であった。私は勧められる薬を飲めば症状はおさまると伝えたところ、ほどなくみちがえるような回復をみせた。又、悪霊つきと言われて10年近く悪霊追い出しの対象となっている女性をカウンセリングしたことがある。統合失調症だとわかったので、「あなたに悪霊はついていない。精神科に行って診断してもらい、薬を飲みなさい。症状がよくなるから」と勧めた。彼女は来たときと出て行くときとでは顔が違って見えるほど笑顔で退出した。
カルト化した教会では、日常が神と悪魔の戦いで、精神的緊張が強いられている。精神的な病を持っている人や情緒不安定な人は症状が悪化するだけだ。何度も「サタンよ出て行け」「悪霊よ出て行け」という対応だけを繰り返されたら、それはもう信仰による虐待だ。
読者に勧めたい。「サタンよ出て行け」と度々牧師や信徒が何人もの人に命じて追い出しているようなら、その教会から出て行くほうがよい。サタンは一人であって偏在ではない。何人もの人に何人ものサタンがついているような神学をもっている教会はその対応において間違っている。又、「悪霊よ出て行け」と毎週礼拝や集会で悪霊追い出しをしている教会なら、注意が必要だ。ノンクリスチャンに対してするよりもクリスチャンに対して悪霊追い出しを日常的にするのはおかしい。パウロは「あなたがたは神の宮であって、神の御霊が自分のうちに宿っていることをしらないのか」(Ⅰコリント3:16)と言っているではないか、なのに悪霊追い出しばかりして、いつクリスチャンが悪霊の宮になったのか。あなたの教会は悪霊の住処ですかと言いたい。
全ての不都合なことを宗教モデルで解決しようとする運動に私は荷担しない。私はペンテコステ派の牧師であるが見分けることを重視し、それにふさわしい対応を心掛けている。もし、ペンテコステ派の牧師がみんな悪魔祓いや悪霊祓いを日常的に実践していると思っていたら、それは偏見である。最後に私自身も悪霊を追い出したことがある。だから、悪霊追い出しを全面的に否定しているわけではない。悪魔祓いや悪霊追い出しによって何でも解決しようとする傾向に注意するためにこの記事を書いている。サタンは偏在ではない。しかし、悪霊は多数存在する。この件では又筆を取ろう。
注:4つのモデルは『講座 臨床心理学-1臨床心理学とは何か』(下山晴彦、丹野義彦 編:東京大学出版会)を参考にした。
by maranatha
| 2008-05-15 08:56
| 霊の戦い