2022年 07月 21日
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ハラスメント相談窓口には、教師等と非会員の信徒との間で「よその教会に行け」と言った言わないの相談が寄せられることがあります。教会籍のない非会員の場合は、こうしたトラブルが起こりやすいのかもしれません。
村上:Aさんは茂木牧師から他の教会にいけなくなるような妨害を受けました。これはよその教会に行けよりもひどい扱いです。(〇〇教会 〇〇牧師の証言 添付)
そこでこうしたトラブルを未然に防ぐために本文書を書きました。以下の事例はこちらで考案した架空のものであり、実際の相談ではありません。
仮想事例 ここから
長い間、教会から離れていたクリスチャンのA氏は、X教会のネット動画の説教を見て気に入り、そこに集うようになった。やがてX教会が教会の社会的責任を強調していることに気付いた。そこでA氏は『政治の話しばかりで恵まれないし、世間の証しにもならないから止めて欲しい。自己啓発セミナーなんかもして欲しい』と、教会内の誰彼構わず言い始めた。教会員たちは、最初はA氏の話に耳を傾けていたものの、何度も聞かされるので苦痛になり、教会のB牧師に相談した。B牧師はA氏と面談してX教会の方針を丁寧に説明したが、A氏は納得せず、その後も言動をやめなかった。そこでB牧師はA氏に面談し、「Aさんのお気持ちは理解いたしました。私たちの教会は政治の話ばかりしているわけではありません。ただ私たちの教会は社会的責任に重荷をもって教会形成をしております。Aさんは私たちの教会で過ごされるのは苦痛でしょう。私たちもAさんのご意見を聞き続けるのは正直辛いのです。ですのでもし今後もAさんが私たちの教会に集うのであれば、教会の方針をご理解していただきたいのです。しかしそれが難しいのであればAさんが望まれるほかの教会に行かれるのが、お互いの平和のためになると思いますがいかがでしょうか」と言った。その後A氏は相談窓口に「よその教会に行けと言われた。これはハラスメントではないか」と訴えた。
仮想事例 ここまで。
この事例はハラスメントに当たるでしょうか。
この事例の場合は、ハラスメントに当たらないと言えます。一般論として、A氏のような非会員に対して、その人の教会観に合う「よりふさわしい」他の教会に移ることを勧めること自体は、必ずしもハラスメントには当たりません。教会が正当な方針をもって教会形成に当たる場合、その方針に反する非会員を他教会に勧めることはあり得ます。ただしその方針が不当であるならハラスメントに当たります。非会員に他教会に移ることを勧めることが正当だとしても、その際のコミュニケーションに不当行為があれば、それがハラスメントに当たります。ですから非会員に他教会に移ることを勧めるに当たっては適切で配慮あるコミュニケーションを取る必要があります。まずは非会員の教会観をよく知ることが不可欠です。教会の方針に対して不安や疑問を抱いている非会員もいるかもしれません。そこを丁寧に聴くことが大切です。相手の気持ちに理解を示しつつ何が是で何が非かを心を尽くして話すことが大切です。対話を拒否せず、怒らず、高圧的にならずにです。同調圧力を掛けたり、噂話を流したりするのはもってのほかです。時として非会員の教会観は、これまで気づかなかった当該教会の文化や価値に気づかせてくれるかもしれません。奉仕等で教会形成に深く貢献している非会員に対して他教会に移ることを勧める場合は一層丁寧なコミュニケーションが必要です。この観点からすれば、非会員の教会観を見定める前に奉仕に携わらせることは慎重であるべきと考えられます。なお「よその教会に行け」とは異なりますが、たとえばコロナ禍で会堂出席を控えてほしいという場合があるかもしれません。その場合も上記のことを参考にし、人格尊厳問題にならないように配慮してください。互いの人格が尊重され、安心して集える教会でありたいものです。
以上は、日本同盟基督教団理事会と人格尊厳委員会宛に提出した文書である。人格尊厳委員会から出してあるパンフレットをかなり引用したが、それは、この文書が各教会並びに教会員に周知徹底されていないと思えるからである。私は図らずも人格尊厳委員会のパンフレットを引用することで、普及することに協力していることになる。知らされずに不利益を被っている信徒がいるかもしれない。知ることは、解決するために力となる。しかし、軽井沢キリスト教会の教会員であったAさんの理事会への訴えは長年無視されてきた。私が代理人になって取り組んでもからも無視され続けている。都合の悪い訴えは、退けられる可能性が高い。それは、これまでの取り組みではっきりしている。だから、声を高くして「日本同盟基督教団の信徒は不利益を被っている」と書き続けた。
2022年 07月 21日
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人格尊厳委員会 シリーズ 「ハラスメントの境目」⑤「無視」
第5回は「無視」を取り上げます。
「話しかけてもいつも無視される」……たまたま気づかなかったというのではなく、常に無視されるというのはハラスメントに当たります。特に組織的に特定の個人を無視することは悪質であると言えます。
村上:茂木牧師は教会員に対してAさんとは関わらないように発言をしています。これは無視を強要していることになります。悪質です。(説教 添付)
「無視」はハラスメントに当たりますが、次のような場合はその判断を慎重にすべきです。
①「無視」している側がうつ状態の場合。人は多忙、人間関係トラブルなどのストレスや喪失体験などでうつ状態になることがあります(5月号の記事)。「無視」している側が既にハラスメントの被害を受けている可能性もあります。心の健康状態が不調なために「無視」せざるを得ないことがあります。こうした場合の「無視」についてはハラスメントの判断を一時保留します。そして心の健康状態を回復するための配慮が必要です。
②当事者間が係争中の場合。
事態を悪化させないために「無視」せざるを得ない場合があります。このように「無視」にも一定の合理性が認められる場合には、ハラスメントの判断を保留します。なお係争中の場合は、代理人や仲介人を立てることによって「無視」の状態を解消することが望ましいでしょう。
村上:人格尊厳委員会は代理人や仲介人を認めておられます。私はAさんの代理人です。改めて、人格尊厳委員会との話し合い、並びに、Aさんの受けた不当な人権侵害を取り上げてくださるように要望します。
③ストーカー対策として「無視」している場合。ストーカーから身を守るために相手を無視することは、問題行動に見合った行為ですので、この場合の「無視」はハラスメントには当たりません(なおストーカーに対していきなり無視すると相手の行為をエスカレートさせる危険性もありますので、「もうかかわらないでください。今後もかかわるようなら無視します」等と相手に警告を与えてからする方がより安全であると言えます)。「無視」という行為だけを取り上げてハラスメントか否かを判断せず、その行為の状況や背景を考慮して判断すべきです。
互いの人格が尊重され、安心して集える教会でありたいものです。
2022年 07月 21日
裁量の範囲を逸脱した行為は、不当な不利益や精神的苦痛を与え、ハラスメントになる可能性があるので注意が必要です。ハラスメント対策のために、裁量の範囲を確認したいものです。
村上:Aさんは、茂木牧師の裁量の範囲を逸脱した行為によって、不当な不利益や精神的苦痛を受けました。人格尊厳委員会で、この逸脱行為を判断していただき、教団理事会には戒規に照らした処分を求めます。
教会の働きには、牧師の裁量で行うものがあります。牧師の働きは牧師職への召しと専門性に委託されたものですから、まずはそこまでが裁量の範囲と考えられます。また教規や教会規則において教会総会や役員会の議を要すると定めてあるものについては、正しく手続きを踏む必要があります。牧師の裁量の範囲は無制限ではありません。
ではたとえば、会堂建築に関する牧師の裁量の範囲はどうでしょうか。仮に牧師自身が会堂建築の専門家だとしても、牧師職としては裁量の範囲を超えたものです。教規はどのように定めているでしょうか。教規には会堂建築そのものに関する定めはありませんが、会堂は教会財産に含まれます。教規には教会財産の管理に関する事項は、教会総会において(第52条)、および役員会において(第57条)処理すべき事項として定められています。また教会担任教師は「教会財産に関する事項の事務を掌る」と定められています(教規第104条)。これらのことを踏まえると、会堂建築の事務を管理することについて、教会総会や役員会の承認を得たものに関しては、牧師の裁量の範囲と考えられます。一方、牧師が教会総会や役員会の承認を得ずに独断で図面を決めてしまったり、独断で業者を決めてしまったりするならば、裁量の範囲を超えた不当な行為としてハラスメントとされる可能性があります。たとえ教会の意見がまとまらないことに耐えかねてしてしまったとしても、あるいは好意からしてしまったとしてもです。会堂建築のように教会員の利益に大きく関与するものは、教会員の意見をよく聞き、協調的に進めていくべきです。牧師の裁量の範囲について、また役員の裁量や会計担当者の裁量の範囲について、一度役員会や教会の皆さんで話し合ってみてはいかがでしょうか。
2022年 07月 21日
指導とハラスメントの境目がわかりにくいという声に応えてシリーズでお伝えしています。
第二回は「茶髪禁止指導」を取り上げます。茶髪(染髪)を始め髪型や服装は個人の人格と自由に関する事柄ですから、不当に制限すべきではありません。では次の場合はどうでしょうか。仮想事例「教会の伝統と対人的な影響を理由に、主任牧師が新人伝道師に茶髪(染髪)をやめるように指導した。」これはハラスメントには当たりません。教職者や教会職員の髪型や服装等について、その職務における対人的な影響を考慮して、円滑な運営上必要かつ妥当な範囲で一定の制限を設けることは必ずしも不当とは言えません。ただし人格の本質にかかわるもの(先天的、医学的な理由等)については制限してはなりません。個別の事柄として、茶髪が妥当かどうかは、個々の教会の伝統や雰囲気によって異なります。全教会一律に「茶髪はよい」「茶髪はだめ」とは言えません。教職者や教会職員の髪型や服装等に関して規則や指針を定めている教会は少ないと思われます。もし本当に茶髪を禁ずるならば、予め規則や指針を定め、就任前に「この教会では茶髪は禁止です」と伝え、合意を得ておくのが望ましいです。もし主任牧師自身や他の教職者の茶髪は許されているにもかかわらず、当人にだけ茶髪を禁じたのであれば、一貫性のない不当な指導としてハラスメントとされる可能性があります。ここまでは教職者や教会職員の髪型や服装などに対する指導でしたが、信徒に対する指導はどう考えればよいでしょうか。職員ではないので、職務上の理由で指導はできません。できるとすれば、例えば公同の礼拝の妨げにならないような常識的なものにするように指導することかと思います。この場合も何が常識かは教会の伝統や雰囲気によって異なります。互いの人格が尊重され、安心して集える教会でありたいものです。
シリーズ第3回は「問題行動に対する叱責」を取り上げます。
仮想事例「自己管理ができずたびたび寝坊で無断遅刻する実習神学生に対して、牧師が一度厳しい叱責をし、改善するように指導した」これは問題行動に見合った叱責や指導なので、ハラスメントには当たりません。問題行動に対して、職務上の責任者が叱責や指導することは正当な行為です。また問題行動の頻度や内容に見合った厳しい叱責をすることは許容されます。ただし、問題行動に対して不釣り合いなほど厳しすぎる叱責や、執拗に繰り返す叱責は不当行為であり、ハラスメントになります。たとえば、週報の軽微な誤字について、作成者に対して怒鳴りつけたり、執拗に叱責を繰り返せばハラスメントに当たる可能性があります。時折、相手に対する嫌悪感や不満から怒りの感情を抑えきれず、度が過ぎる叱責や指導をする人がおります。
村上:茂木牧師のAさんへの言動は上記の内容に該当します。Aさんは心身ともに体調を崩し、礼拝にも参加できないほどになりました。(PTSDの診断書 添付)
本人に責任がないことにまで八つ当たりする人もおります。叱責や指導の前に、冷静になって叱責や指導内容を検討する必要があります。過労や心身不調のためにミスをすることもあります。そこに叱責が重なるとさらに体調が悪化しミス頻発という悪循環に陥る可能性があります。叱責や指導の前に、疲れ具合や健康状態を気遣い、休息や負担軽減など適切な配慮をするべきでしょう。教会においては、牧師が信徒を指導することはありますが、両者の関係は会社における上司と部下の関係とは異なります。むしろ牧師は仕える者として信徒を導くという姿勢が大切です。複数の教職者がいる場合であっても、上司と部下の関係ではなく、互いに同労者であるという認識が不可欠です。この点が、会社と教会の違いです。神学生に対しても将来の同労者として人格を尊重したいものです。互いの人格が尊重され、安心して集える教会でありたいものです。
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