母が高齢で、段々弱ってきた。会話ができる内にと思って故郷に帰った。いつものように集落を散策した。ザクロの木には赤い実がついている。梅木には青い実が実っている。柿木には小粒だが青い柿の実がたわわについている。いたるところにノブドウがつるを伸ばし、白い花を咲かせている。父の墓を訪ねた。その傍に、野イチゴが実っていた。思わず、口にほおばり、子供のころを思い出した。野山を駆け回り、鳥と競争して木の実を食べて過ごした。
村を歩きながら見るのは草木だけではない。足元の石も見て歩く。今まで村では見たこともない石を拾った。握りこぶしぐらいの黒いガラス質の石だ。原石の黒曜石のようだ。この近くには、石の本遺跡があり、3万年前からの住居跡がある。遺跡からは黒曜石も出土しているので、黒曜石の可能性は高い。先月まで手元にハンドボール大の黒曜石を持っていたが手放した。ちょと小ぶりになって帰ってきたみたいだ。
肥後の国分寺の瓦と熊本城の瓦は村で作られた。昔、村は瓦の産地だった。いたるところの赤土があり、子供のころは土面を作って遊んだ。家の下の段には昔、瓦を造っていた家がある。散策の途中、村の古い墓の年代を見て回った。その家の墓があった。何と延宝4年(西暦1676年)の墓碑だ。江戸時代には工人集団が村に住んでいた時期もあり、その末裔かもしれない。